AIエージェントツール
ChatGPT のようなチャットとは別物の「AIエージェント」(Claude Code・Codex など)。自分のPCやプロジェクトの中で、ファイルを読み・コマンドを実行し・変更まで行う。何が違い、どう使いこなすか。
1-1AIエージェントと Web版チャットの違い
Web版チャット(ChatGPT・Claude.ai など)とは、そもそも別の道具。
Web版チャット
質問に答えて待つ。文章のやり取りが中心で、あなたのファイルやシステムには触らない。
ChatGPT・Claude.ai など
AIエージェント
ターミナル(黒い画面)に常駐し、あなたの環境で手を動かす。ファイルを読む・コマンドを走らせる・複数ファイルを書き換える・結果を見て自律的に進める。
Claude Code・Codex など
2つの違い
- 手を動かす:自分で書いてAIに見せるのではなく、「やりたいこと」を伝えると、AIが探索 → 計画 → 実装まで行う。
- 道具を使う:Web版は使える道具が固定・限られる。エージェントはあなたの環境の道具(ファイル操作・コマンド・git・検索・外部システム…)まで使える。
1-2道具を「知って・使わせる」のが肝
エージェントの強さは、あなたの環境の道具を使えること。「何が使えるか」を知り、使うよう明示するのが上達の近道。
やりたいことには、たいてい“公開された道具”がある
- 何かやりたいとき、それ専用の便利なツール/ライブラリが世の中に公開されていることがほとんど。エージェントはそれを呼び出して使う。
- 例:PDFを編集するツール、Word・Excel・PowerPointを扱うツール、画像加工、データ集計 など。
- MCP(外部システム接続の共通規格)でも、対応ツールが次々に公開されている(後述)。
- =ゼロから作らず、既製の道具を借りて使う(スキル〔2-4〕やライブラリと同じ発想)。
外とつながれるのが大きな強み
- APIを叩ける → データを持ってこれる:社内外のサービスから最新データを取得して使う。
- CLIを操作できる:
gh・aws・gcloudなどのコマンドで外部サービスを直接動かす(最も手数が少なく効率的)。 - 加えて、ファイルの読み書き・コマンド実行・git(履歴/差分)・Web検索 も道具。
既製の道具がなければ、その場でスクリプトを書く
- 専用の道具がない処理は、AIが小さなプログラム(スクリプト)を書いて実行して片付けられる(強力だが、まず探すのは“既製の道具”)。
- しかも出力が安定する:決まった処理をコードにやらせると、同じ入力なら同じ結果=再現する。検証もでき、残せば次も同じ品質。
- 例:「1000件を目で数える」より「数えるコードを書いて実行」。
AIの苦手は道具で補う
- 正確な計算・文字数・学習後の最新情報は苦手。「コードを実行して数えて」「Web検索で最新を確認して」のように道具を指定する。指定しないと“頭の中”で済ませ、自信満々に間違える。
1-3できること/苦手なこと
- 得意:手順を事前に決めきれない開放的な仕事。特にコーディングはテストで正否を検証できるので、結果をフィードバックに自分で直せる(実際にGitHubのIssueを自律解決する)。
- 得意:コードや資料の調べ物・説明(「このコードは何をしている?」と、先輩に聞くように尋ねる)。
- 苦手・注意:自律ゆえ誤りが連鎖し、コストも増える。要所で人間の監督が要る(丸投げしない)。
- 原則:検証できる形(テスト・スクリプト・スクショ)を渡すほど、安心して任せられる。
2-1最大の制約=コンテキスト(作業机)
エージェントは、限られた「作業机(コンテキスト)」の上で考える。会話・読んだファイル・コマンド出力のすべてが机を占有する。チャット履歴は資産にならない。
- 机が埋まると性能が落ちる(前の指示を忘れる・ミスが増える)。1回の作業で数万トークン消費することもある。
- だから 長いチャット履歴は資産にならない。むしろノイズになる。
- 無関係な話に移るときは履歴をリセットして机を片付ける。
- 残したい価値はファイルに書く(ルールファイル・スキル・仕様書・gitのコミット)。=資産はファイルに貯める。
2-2ルールファイル ― 毎回読ませる「前提」
エージェントは毎回、決められたファイルを最初に読む。そこにプロジェクトの前提を書いておけば、毎回同じ説明を省ける。
- Claude Code は
CLAUDE.md/Codex など多数はAGENTS.md。名前は違うが役割は同じ=「エージェントに毎回渡す前提メモ」。 AGENTS.mdは多ツール共通のオープン規格(“エージェント版のREADME”)。Codex・Copilot・Cursor・Gemini CLI など多数が対応し、1つ書けば複数ツールで効く。- 何を書くか:コードから推測できない前提だけ。
- 入れる:ビルド/テストのコマンド、独自のコード規約、ブランチ・PRの作法、環境の癖、非自明な落とし穴。
- 入れない:コードを読めば分かること、言語の常識、頻繁に変わる情報、長い説明。
- 短く保つ:長いと肝心の指示が埋もれて無視される。各行に「これを消すとAIが間違えるか?」を問い、要らなければ削る。
2-32種類のメモリー ― 人が書く指示/AIが書く学び
人が書く指示
ルールファイル。あなたが「こうして」を書く。
AIが書く学び
自動メモリー。AIが会話中の修正や好みを自分でメモに残し、次から反映する。
置き場所(スコープ)で分ける
- 本体側(自分用・全プロジェクト共通):どのプロジェクトでも効く自分の好み・作法。
- プロジェクトごと(リポジトリの中):そのプロジェクトの決まり。gitに入れればチーム全員で共有。
- 個人メモは共有する場所に混ぜない(分けて置く)。
2-4同じ作業を再現させる ― スキル/コマンド
同じ手順を何度も貼っているなら、それはスキル化のサイン。
- スキル=手順書ファイル。ルールファイルと違い、使うときだけ読み込まれるので、長い手順を置いてもコストが増えない。
- 例:「Issueを直す」スキル=〈読む → 調べる → 直す → テスト → コミット → PR〉を定型化し、一言で起動。
- 削除・送信など副作用のある手順は手動起動にして事故を防ぐ。
- 説明文は「何をする・いつ使う」を、他人に説明する三人称で書く。ここが曖昧だと呼び出されない。
- ゼロから書かなくてよい:多くのスキルは公開・インストールできる。スキルを作るためのスキル(
skill-creator/writing-skills)まである。ただし玉石混交なので、公式・定評あるものを選ぶ。
良いスキルの作り方(段階的開示):必要なときだけ深く読み込ませ、机(コンテキスト)を節約する。
3-1伝え方 ― 良い言い回し/悪い言い回し+認識合わせ
具体的なほど、直しが減る。曖昧な指示は“探索したいとき”だけ有効。
| × 曖昧・丸投げ | ○ 具体的な指示 |
|---|---|
| テスト追加 | ログアウト時のエッジケースを、モックなしで |
| なぜ変なAPI? | gitログを辿って経緯を要約して |
| カレンダー機能を追加 | 既存の◯◯を手本に、同じパターンで |
| ログインのバグ直して | timeout後に失敗。auth周りを疑い、再現テストを書いてから直す |
| 見た目を良く | [画像]この通りに。スクショを撮って差分を挙げ、直す |
認識合わせ=文章化
- 作業させる前に、理解を確認する:いきなり着手させず、まず自分の意図を正しく理解しているかを確かめる(「どう理解した?」と一言聞く程度でよい)。ズレていれば作り始める前に直す。
- 大きな仕事は、いきなり作らせずAIに質問させて仕様(SPEC)を先に文章化 → 合意 → 実装。
- 仕様をファイルに残せば、実装はきれいな状態から始められる(計画で机が散らかったら、新しいセッションや
/clearでリセット。短ければ同じセッションのままでよい)。 - 良い仕様は自己完結:関係ファイルを名指し、やらないことを明記、最後に動作確認の手順を置く。
- 原則:「どのファイル・どんな条件・完了の定義」を渡す。
3-2AIにわかりやすいフォルダ設計
- 規則的で、名前が説明的な構造ほどAIが辿りやすい。
- 手本を指す(「この既存ファイルに倣って」)と精度が上がる。
- ルールファイルは階層で置く:全体は上、個別は下。近いものが優先(大規模でも迷わせない)。
- 「1機能1ファイル」「決定は追記だけ(記録として残す)」など、明確な分割はAIも人も読みやすい。
- =この考え方を1つの具体像にまとめたのが第4部。具体的なフォルダ例は 4-7。
3-3権限・安全性 ― 勝手に実行させない
エージェントは実際にコマンドを実行できる=便利だが危険もある。既定では、変更を伴う操作の前に確認が入る。
確認疲れを減らす3段階(下ほど自由・上ほど安全)
npm run lint など安全な操作だけ自動許可- Codex は既定で「提案のみ」(承認するまで実行しない)=安全な出発点。
- 鉄則:検証できないものは出さない。人間のレビューを前提に運用する。
3-4外に広げる ― 外部接続・チーム共有・失敗パターン
- 道具を増やす(MCP・CLI):
ghなどのCLIや MCP で、Issue管理・DB・デザイン・監視・社内システムにつなぐ。=エージェントの手が届く範囲を広げる。 - チーム共有:ルールファイルをgitにコミットすれば、全員が同じAI挙動を得る(属人化を防ぐ)。共通規格
AGENTS.mdなら多ツールで共有できる。
よくある失敗(と対策)
- 何でも詰め込みセッション → 無関係な話でリセット
- 同じ修正の繰り返し → 2回ダメなら履歴を捨て、良い指示で再開
- ルールファイルが肥大 → 剪定する
- もっともらしいが未検証 → 必ず検証を渡す
- スコープなしの「調べて」で暴走 → 範囲を絞る(別枠で調べさせる)
3-5各テーマは、もう「スキル」として公開されている
この資料で挙げたベストプラクティスの多くは、すでに公開スキルとして存在する。自分で書く前に、探して使う/手本にするのが早い。
- 公式(Anthropic):
pdf/docx/pptx/xlsx(Word・Excel・PowerPoint・PDFを作る)、web-artifacts-builder、webapp-testing、mcp-builder(外部接続)、skill-creator。 - Claude Code 同梱:
/code-review(差分をレビュー)、/debug。 - コミュニティ:
superpowers、addyosmani/agent-skillsなど、開発の一連(要件→計画→実装→検証→レビュー→出荷)を網羅する集まり。
この資料のテーマ → 近い公開スキルの例
| テーマ | 近い公開スキルの例 |
|---|---|
| 道具で成果物を作る | pdf/docx/pptx/xlsx、web-artifacts-builder |
| 認識合わせ・仕様の文章化 | interview-me、brainstorming、spec-driven-development、writing-plans |
| 計画 → 実装を分ける | planning-and-task-breakdown、executing-plans |
| 検証してから完了 | test-driven-development、verification-before-completion、debugging-and-error-recovery |
| 別の目でレビュー | /code-review、code-review-and-quality、doubt-driven-development |
| コンテキスト管理 | context-engineering |
| 外部接続(MCP) | mcp-builder |
| 決定を記録(ADR) | documentation-and-adrs |
| 権限・安全 | security-and-hardening |
| 並列・サブエージェント | dispatching-parallel-agents、using-git-worktrees |
| スキル自体を作る | skill-creator、writing-skills |
- 注意:公開スキルは数十万規模だが品質はまちまち(調査では平均品質は中程度、良質なものだけが成績を大きく上げる)。公式・定評あるものを選ぶ。共通規格(Agent Skills)なので、Codex・Cursor・Gemini CLI など多ツールで使い回せる。
第1〜3部の考え方(道具・コンテキスト・ルールファイル・フォルダ設計)を、1つの具体像にまとめる。プロジェクトを会社(1つのオフィス)に見立てる。フォルダ=部屋、その部屋に置く指示書=ルールファイル(CLAUDE.md/AGENTS.md)。
4-1会社の見取り図 ― 働くのは1人、部屋ごとに指示書
- プロジェクト=会社(建物)。中のフォルダ=部屋。
- 働くのはAI1人(新人)。部屋が勝手に動くのではない。新人が部屋を巡回し、入った部屋のドアに貼ってある指示書を読んで、その通りに手を動かす。
- つまり ―― 場所=フォルダ/指示書=そこに置くルール/動く人=AI1人。この3つを分けて考える。
部屋は役割で分ける(回る順番は仕事によって変わる。必要な部屋だけ置く)。中身は 4-4 で扱う。ここに挙げるのは例。大事なのは「役割ごとに分ける」考え方で、自分の仕事に必要な役割を見つけて、部屋を自分で足す(例:翻訳室、集計室、レビュー室 など)。
- もの・データが流れる部屋:データ倉庫(生データの保管)/加工室(データを変換。道具棚つき)/デザイン室(出力の体裁)/出荷室(完成物の置き場)
- それを支える部屋:資料室(記録)/見本室(手本)/検品室(検証)/金庫(鍵・認証情報)/下書き室(一時ファイル)/ルール室(共通の規程。4-5)
4-2指示書があるか、ないか ― ここが安定の分かれ目
新人が部屋に立ったとき、何をするかは従うべき指示書があるかで変わる ―― その部屋に貼ってあるか、または共通の手順書を持ち込んでいるか(4-5)。
- 指示書がある(貼り紙、または持ち込み):その通りに動く。だから毎回同じ結果=安定する。
- 指示書がない(貼り紙も持ち込みもない):新人はその場を放置しない。その時の全体の指示(入口の一般的な決まりや、口頭で頼んだ一過性の指示)を頼りに、自分の判断で「いい感じ」に仕上げてしまう。頼めば動くが、拠り所がその場限りなので毎回変わる。
指示書がないと、こうブレる(例)
- デザイン室に体裁の指示書がない → 出力のたびにフォント・色・見出し・形式が変わる。前回と揃わない。
- データ倉庫に仕分けの規則がない → 置き場所や名前がバラバラになり、次に探せない。
- 加工室に手順・使う道具の指示がない → 自己流で処理する。うまくいく回もあるが、方法が毎回変わって安定しない(苦手な処理を道具なしで済ませ、外すことも)。
4-3AIの思考をどこに使うか ― 考えさせる所と、決めておく所
安定にはもう1つの軸がある。仕事を「AIに考えさせる所」と「決まった手順に固定する所」に切り分けること。
- 考えさせる所(ルール+思考):ルール(規約)を守りながら、判断・創造して出力する部分。例:コーディングのロジック設計、文章の構成、分析の切り口。ここはAIの思考が価値を生む。
- 決めておく所(固定スクリプト):毎回同じでよい、決まった処理。例:整形・lint・ビルド・テスト実行・集計・形式そろえ。ここはスクリプトや道具に固定する。
なぜ切り分けるか
- AIの思考はゆらぐ・毎回少し変わる・コストがかかる。考える必要のない所まで毎回考えさせると、遅く・不安定になる。
- 決まった所をスクリプトに固定すると毎回同じ・速い・検証できる。そのぶんAIの思考を本当に判断が要る所に集中させられる(1-2「決まった処理はコードにやらせる」を設計判断に引き上げたもの)。
- コーディングが顕著:ロジック(考える)と、整形・テスト・ビルド(決まった手順)の線引きがはっきりしている。後者を毎回考えさせない。
どこまで任せられるかは、状況で動く
- モデルの能力(上位ほど複雑な判断に強い)/思考時間(じっくり考えさせるほど難所に強い)。
- タスクの難しさ・曖昧さ/渡した材料(指示書・手本・仕様・データ)の質/指示の具体性(3-1)/検証できる形か(1-3)。
- → 固定の正解はない。小さく試し、結果を見て「ここまで任せる/ここは決め打ちにする」の感覚をつかむしかない。
4-4各部屋に何を書くか(指示書の中身)
各部屋の指示書には、「その部屋で毎回ブレると困る決め事」を書く。コードや中身を見れば分かることは書かない(2-2 ルールファイルと同じ原則)。
もの・データが流れる部屋
| 部屋 | 指示書に書くこと |
|---|---|
| データ倉庫 | 命名・仕分けの規則(日付別/クライアント別など)、どこに保管するか |
| 加工室 | どんな操作をするか、使うべき道具(ツール/ライブラリ)、入力データの在り処 |
| デザイン室 | テンプレート、CSS、出力形式(PDF・HTML など)、体裁の決まり |
| 出荷室 | 完成物の置き場所(加工前データと同じ場所か、分けるか)、命名 |
それを支える部屋
| 部屋 | 指示書に書くこと/中身 |
|---|---|
| 資料室 | 参照すべき仕様・要件・決めごとの記録(変えない記録として残す) |
| 見本室 | 「この成果物に倣って作れ」=手本の指定 |
| 検品室 | 出す前に通す検証・チェック項目、完了の条件 |
| 金庫 | 鍵・認証情報は外に出さない・共有場所(git)に入れない(実際は部屋というより鍵付きの1ファイル) |
| 下書き室 | 一時ファイルの置き場。完成物と混ぜない |
- ルール室は、複数の部屋で共有する共通の規程を置く場所。読ませ方が他と違う(持ち込み式)ので、4-5で扱う。
- 「使うべき道具があればそれを使う」ことも、加工室の指示書に明示(指定しないと自己流で済ませる)。共通して使う道具は、別に道具庫としてまとめてもよい。
- 出来上がりをどこに置くかまで書く。置き場が曖昧だと、次に取りに来たとき迷う。
4-5指示書の置き場所と読まれ方 ― 入口は薄く、共通は持ち込む
すべてを入口(メインルートの CLAUDE.md)に書くと、コンテキスト圧迫(関係ない規則まで毎回読む)と指示のブレ(別の部屋の規則が混ざる)が起きる。だから入口は薄く保ち、置き場所を3つに分ける。
- 入口(ルート):短い全体ルールと、建物の地図(「各部屋の指示書に従え」)。作業の最初に自動で読まれるので、全体に効く短い決まりだけ置き、薄く保つ。
- 各部屋の貼り紙(そのフォルダの指示書):その部屋だけの固有ルール。その部屋のファイルに触れた時点で自動で読み込まれる。近い部屋の指示書ほど優先。
- 共通文書(ルール室にまとめて置く手順書):複数の部屋で共有する、または長くて入口に置きたくない決まり(例:コーディング規約、命名規則、検品の手順)。各部屋に貼らず1か所にまとめ、その部屋に入るときに「これも読め」と参照させて持ち込む。
"持ち込み(参照)"の方が、むしろ多い
- 「全部屋で常に効くルール」は実は少ない。多いのは「この部屋(この種類の作業)に入るなら、この共通文書も読め」という部屋を限った参照。
- 例:コーディングをする部屋に入るときだけ、ルール室のコーディング規約を持ち込む。データ倉庫やデザイン室には持ち込まない。
- こうすると、共通ルールを部屋ごとに複製せず1か所で直せて、要る部屋にだけ効く。スキル(2-4)も、この持ち込む手順書の一種。
4-6その場しのぎでなく整備する ― 指示書を育てる
指示書は、ゼロから自分一人で書かなくてよい。作り方は2つ。
- AIと一緒に作る:「こういう出力にしたい/この部屋ではこう決めたい」と目的をAIに伝え、指示書の案をAIに書かせる。案と実際の出力を見比べ、AIと直していけば狙い通りに近づく。
- 良い出力から逆算する:たまたま上手くいった成果物から、効いていた決め事を抜き出し、各部屋の指示書に落とす。
どちらの場合も ―― 毎回変わるもの(その回の入力・宛先など)だけその都度指示し、変わらないものは指示書に固定する。=一過性の成功を、次から再現する仕組みに変える。
4-7使い方の例 ― 3つのケース(部屋をフォルダに落とす)
これまでの考え方と会社モデルを、具体的な仕事にあてはめる。各例で、部屋(役割)が実際のフォルダにどう並ぶかも示す。
①アナリティクスのレポートを毎月作るAPI → PDF → 繰り返し
- データはAPIで自動取得:手入力やCSVでも作れるが、APIを叩けば取得を自動化できる。特に定期的に作るもの(毎月のレポート等)は効果が大きい。
- 整形・PDF化は既製の道具:PDFを作るライブラリ/ツールで体裁に整える。
- 手順をスクリプト/スキルに固める:一度作った流れをスクリプト化すれば、翌月は「今月分を作って」で同じ品質のPDFが再現。人は数字の確認だけ。
- 形式はルールに書く:項目・並び・宛先・体裁をルールファイル/スキルに定義 → 毎回ブレない。
report-monthly/ ├── CLAUDE.md # 入口:地図+短い全体ルール ├── data/ # データ倉庫(API取得の生データ・日付別)+ CLAUDE.md(仕分け規則) ├── scripts/ # 加工室(集計スクリプト・道具)+ CLAUDE.md(手順・使う道具) ├── templates/ # デザイン室(体裁・CSS)+ CLAUDE.md(形式) └── output/ # 出荷室(完成PDF)
②Webサイトを作る
- まず認識合わせ:目的・ページ構成・トーン・参考サイト(画像で見せる)を、AIに質問させて仕様に文章化。言葉より手本を見せるのが速い。
- 1ページずつ作って、見て直す:作る →ブラウザ表示/スクショ→ 差分を見て直す、の短いループ。一気に全部作らせると崩れる。
- 既製の部品を使う:UIのテンプレートやライブラリを活用。ゼロから書かせない。
- 一貫性はルールで:配色・フォント・命名・使うライブラリをルールファイルに。全ページで揃う。
site/ ├── CLAUDE.md # 入口:配色・フォント・使うライブラリ(短い全体ルール) ├── pages/ # 各ページ ├── styles/ # デザイン室(CSS・テンプレ)+ CLAUDE.md ├── assets/ # 画像など └── examples/ # 見本室(参考サイトのスクショ=手本)
③アプリを作る
- 認識合わせ → 仕様書:AIにインタビューさせ、何を作る/作らない/完了条件を先に仕様(SPEC)として文章化。合意した仕様はファイルに残す。実装はきれいな状態から始める。
- 既製ライブラリを使う:ログイン・DB・決済などは公開ライブラリ/サービスを使う(車輪の再発明をしない)。
- ルールファイルで土台を固定:使う技術・規約・テスト方法・ブランチ運用を
CLAUDE.md/AGENTS.mdに書き、gitで共有。 - 検証しながら小さく進める:テストを書かせて通す → 次。権限は確認/サンドボックス。技術選定などの判断は記録(ADR)に残す。
app/ ├── CLAUDE.md # 入口:使う技術・短い全体ルール ├── docs/ # 資料室(仕様SPEC・決定ADR) │ └── conventions.md # ルール室:コーディング規約(コード作業時に持ち込む) ├── src/ # 加工室(実装)+ CLAUDE.md ├── tests/ # 検品室(テスト) └── .env # 金庫(gitに入れない)
参考・出典(2026年7月時点)
- Claude Code 公式ドキュメント(Best practices/Memory/Skills/Large codebases)
- Anthropic「Building effective agents」「Agent Skills」
- AGENTS.md(オープン標準)/OpenAI Codex 公式ドキュメント
- 公開スキルの例:anthropics/skills(公式)、obra/superpowers、addyosmani/agent-skills、agentskills.io